女を見た。
ある所要で足を向けたデパートの入り口にその女は居た。手動で開ける観音開きのその扉はまるで客に入り易さを主張しているかの様なガラス作りでデパートにはよく見られる型だったが、厭に重いのが煩わしいと常々思っていたものだった。そんな普通の出入り口に女はいたのだ。
元々そのデパートへ入ろうとしていた私は躊躇い無く扉の方へ足を進めていたが遠目から動かない女を見て一瞬だけ躊躇した。それは何かが行く先に立ちはだかるとつい他の道のを探してしまうような日本人特有の消極的衝動からなる物だった気がするが、その時の事はよく覚えていない。何故ならその1秒後には私は先の考えとは一転して扉にすごい勢いで駆け寄っていたからだ。扉に挟まれていた女に手を貸す為に。
驚いた。それは全く持って予想していなかった事だった。
私自身、扉が重いと右記で書いたが昨今人が通る際に力が足らず挟まれてしまうほどの扉にはお目に掛かった事が無い。現に私が今女を助け出そうと手をかけた扉はすんなりと(やはり多少力は入れなければならなかったが)開いたのだ。
そんな私の戸惑いの表情と心情からを知ってか知らずか、女はやっと自分の状況と手を貸した私に気がついたのか振り返って小さく呟いた。
ありがとう。
その時の私の驚きは誰も分からないだろう。
まず私は女の肌の白さに驚いた。まるで40年日を浴びていないような(後々考えると30代前半の様に思えたがこの時の私には40歳前後に見えたのだ)その肌は透ける様にとは言い難く黄色が白みを帯びたようなそんな白さを見たのだ。
そして次に感じたのは女のやせ細った顔だった。
よくやせ細った顔を骸骨のようだと称するのを聞くがそれを考えると多少妙に思えた。女は骸骨の頬骨と顎の先端に薄皮一枚を張った様な便りの有る三角型の顔をしていた。それは頬が扱けている様にも見え肉無く皮だけがピンと張っている様にも見える便りの無い三角だった。
そんな女の顔を見ていられずフッと目を逸らした私を見て意が伝わったと思ったのか、女は小さく微笑んでからそのデパートへと1人先に入って行った。視界の端にその笑みを感じた私は急いで女の背中を追ったが目に入ったのは小さい背中と恐ろしく細い足首だけだった。私の指三本ほどのその足首がよくも身体を支えていると思ったが遠ざかる身体もまるで竹の様に見えたのでああバランスは取れているのかもしれない、と驚きの抜けない頭でただ考えていた。
その後考えれば考えるほどあんなに細く白い身体があるわけ無いと思え、しまった狐に化かされたなど結論付けたが最後に見せたあの微笑みは人間くさかったなと自分の黒く健康的な手を見てそう思ったのだ。
ある所要で足を向けたデパートの入り口にその女は居た。手動で開ける観音開きのその扉はまるで客に入り易さを主張しているかの様なガラス作りでデパートにはよく見られる型だったが、厭に重いのが煩わしいと常々思っていたものだった。そんな普通の出入り口に女はいたのだ。
元々そのデパートへ入ろうとしていた私は躊躇い無く扉の方へ足を進めていたが遠目から動かない女を見て一瞬だけ躊躇した。それは何かが行く先に立ちはだかるとつい他の道のを探してしまうような日本人特有の消極的衝動からなる物だった気がするが、その時の事はよく覚えていない。何故ならその1秒後には私は先の考えとは一転して扉にすごい勢いで駆け寄っていたからだ。扉に挟まれていた女に手を貸す為に。
驚いた。それは全く持って予想していなかった事だった。
私自身、扉が重いと右記で書いたが昨今人が通る際に力が足らず挟まれてしまうほどの扉にはお目に掛かった事が無い。現に私が今女を助け出そうと手をかけた扉はすんなりと(やはり多少力は入れなければならなかったが)開いたのだ。
そんな私の戸惑いの表情と心情からを知ってか知らずか、女はやっと自分の状況と手を貸した私に気がついたのか振り返って小さく呟いた。
ありがとう。
その時の私の驚きは誰も分からないだろう。
まず私は女の肌の白さに驚いた。まるで40年日を浴びていないような(後々考えると30代前半の様に思えたがこの時の私には40歳前後に見えたのだ)その肌は透ける様にとは言い難く黄色が白みを帯びたようなそんな白さを見たのだ。
そして次に感じたのは女のやせ細った顔だった。
よくやせ細った顔を骸骨のようだと称するのを聞くがそれを考えると多少妙に思えた。女は骸骨の頬骨と顎の先端に薄皮一枚を張った様な便りの有る三角型の顔をしていた。それは頬が扱けている様にも見え肉無く皮だけがピンと張っている様にも見える便りの無い三角だった。
そんな女の顔を見ていられずフッと目を逸らした私を見て意が伝わったと思ったのか、女は小さく微笑んでからそのデパートへと1人先に入って行った。視界の端にその笑みを感じた私は急いで女の背中を追ったが目に入ったのは小さい背中と恐ろしく細い足首だけだった。私の指三本ほどのその足首がよくも身体を支えていると思ったが遠ざかる身体もまるで竹の様に見えたのでああバランスは取れているのかもしれない、と驚きの抜けない頭でただ考えていた。
その後考えれば考えるほどあんなに細く白い身体があるわけ無いと思え、しまった狐に化かされたなど結論付けたが最後に見せたあの微笑みは人間くさかったなと自分の黒く健康的な手を見てそう思ったのだ。
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志摩
性別:
女性
自己紹介:
とっくに成人済み
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